フェリス女学院の教育

建学の精神 キリスト教信仰に基づく女子教育

フェリス女学院の創設者キダー(Mary Eddy Kidder, 1834-1910)は、1869年にアメリカ改革派教会(Reformed Church in America)からキリスト教伝道のため日本に派遣され、翌1870年からヘボン(James Curtis Hepburn, 1815-1911)の夫人クララ(Clara Leete Hepburn, 1818-1906)の教育活動(ヘボン塾)を引き継ぎました。フェリス女学院創立の起源です。

キダーはアメリカ改革派教会外国伝道協会本部総主事フェリス(John Mason Ferris, 1825-1911)に、イエス様を受け入れようとしている女生徒たちの喜びに満ちた姿を報告しています。

私はいくつかの讃美歌を教え、少女たちは「主われを愛す」を見事に歌い、「牧主わが主よ」、「あまつみくには」、「ささやかなる、しずくすら」なども歌えます。・・・・・・彼女たちの愛らしい小さな声が、こうした貴い讃美歌を非常に見事に歌うのをお聞きになり、彼女たちの心が感応する日も間近であると感じられれば、きっとあなたの心も和まれることでしょう。(1871年10月21日付ミッション本部フェリス宛書簡)

キダーは1875年に念願の女子教育のための校舎を、現フェリス女学院校地の山手178番に建設しました。この年のアメリカ改革派教会婦人伝道局宛の報告書に、キダーはフェリス女学院における教育の一端を記しています。そこに、礼拝と聖書の学びを大切にしていたキダーの姿を窺うことができます。

私たちの授業時間は、午前は9時から12時30分で、英語で行われますが、先ず歌唱練習、祈祷、英語の聖書朗読と日本語による説明で始まります。・・・・・・夕べの祈りはすべて日本語で行われ、・・・・・・(「1875年度フェリス・セミナリー報告書」)

キダーを通して私たちに与えられたキリスト教の信仰は、中高等学校の生徒全員が毎朝一堂に会し祈りをあわせるという形で、今に引き継がれています。また、大学でも毎日礼拝が守られています。

キダーは1881年フェリス女学院を辞し、夫のミラー(Edward Rothesay Miller, 1843-1915)と共に地方伝道の道を志します。キダーは、10年間という時間を、女子教育という場面で、伝道のために献げました。その間にキダーを通して与えられたキリスト教の信仰は、現在に至るフェリス女学院の歴史のすべてに息づいています。フェリス女学院の建学の精神が、「キリスト教の信仰に基づく女子教育」とされる所以です。

教育理念 FOR OTHERS

フェリス女学院の教育理念"For Others"は、誰か特定の人によって、提案されたのではありません。およそ100年ほど前に、誰言い出すともなくキャンパスに自ずと醸し出され、フェリス女学院のモットーとしてごく自然に定着しました。

"For Others"のキリスト教的な意味を問い直すとすれば、やはりイエス様に立ち戻るのがよいでしょう。イエス様に"For Others"という表現を用いることを促したかもしれないような場面を、福音書に探し出すことができれば、必要な手懸りが得られるはずです。

イエス様は、「善いサマリア人」というたとえ話(「ルカによる福音書」10章25節以下)において、誰が隣人(仲間)で誰が隣人(仲間)でないかを問うような発想は捨て、「自分を必要としている人の隣人になる」ように求めています。この求めには、仲間内だけの隣人愛から、全人類的な助け合いを展望する隣人愛への飛躍の可能性が、秘められています。

イエス様によって示された全人類的な助け合いを展望する隣人愛に基づいて、キリスト教はこの2000年の間、場合によっては民族間の壁をも乗り越えて、「自分を必要としている人の隣人になる」ことを実践してきました。このような意味で、フェリス女学院の教育理念"For Others"は、イエス様が示してくださった隣人愛の精神と深く関わっています。

"For Others"は、フェリス女学院の教職員、学生・生徒を始めとして、フェリス女学院に連なるすべての人の心を結ぶ大切なフレーズです。"For Others"を手懸りにして、社会の皆様とも心を通わせたいと、フェリス女学院はいつも念願しています。

フェリス女学院の教育 女子だけを対象とする教育の意義

ヒラリー・クリントン(Hillary R. Clinton)がアメリカ合衆国マサチューセッツ州の女子大ウェルズリー・カレッジ(Wellesley College)を卒業したことはよく知られていますが、日本でも第一線で活躍する女性のうち女子大出身者、女子中高等学校出身者の割合は決して小さくありません。それでは女子だけを対象とする教育機関の存在意義は何処にあるのでしょうか。

女子が男子と同じ立ち位置を制度的に保証されるようになったのは、人類の長い歴史で言えばつい最近のことです。しかし、注意を要するのは、その制度的保証が、女子が男子と同じ立ち位置に立てるようになったという事実を追認した結果ではないという事実です。女子が男子と対等な立ち位置に立てるようになることを促すために、制度的に女子の立ち位置を意図的に保証しようとした結果です。

このような歴史状況の下では、女子だけの教育環境によって、女子は男子中心の社会的諸関係に邪魔されて気づけなかったような自らの資質能力をより容易に発見できる可能性が生まれます。

それだけでなく、女子だけの教育環境によって、女子は男子中心の社会的諸関係特有のイデオロギーに拘束されることなく、女子(人間)本来のありうべき姿に気づくために必要な感性を養うことができます。そのような経験があれば、男性中心の社会の不条理に気づき、その不条理に立ち向かうために必要な論理と情熱を自ずと身につけることができます。

私たちは、女子だけを対象とする教育機関の存在意義を確信しています。フェリス女学院は、創設者キダー(Mary Eddy Kidder, 1834-1910)から託された「キリスト教の信仰に基づく女子教育」という建学の精神をこれからも大切に守ります。

理事長メッセージ フェリス女学院理事長 奥田義孝

フェリス女学院が、アメリカ改革派教会の宣教師キダーによって
横浜の地に設立されて、既に140年余が経ちました。キリスト教の信仰を建学の精神とし、
聖書に由来する"For Others"の句を教育理念として掲げる本学院は、
この間、知的で、然し謙虚な、フェリスの香りを爽やかに湛えた多くの卒業生を世に送り出してきました。
神の前に、自立、独立した一人の人格として立ち、それゆえに他者を心に覚えつつ、それぞれの持ち場で
社会に貢献する人材を育んできたことは、フェリス女学院の長い歴史が証明しています。
今の時代は、国の内外を問わず、将来を見通せない混迷の時代と申せましょう。
フェリス女学院は、建学の精神、教育理念を、時代を超えた不変のものとして堅持するとともに、
未来に向けてこれからの教育はいかにあるべきかを考え、これを実現するため不断の努力を続けています。
わが国で最も旧い歴史を有する女子校として、その存立の意義と果たすべき役割を常に再確認し、
よりよい教育を通じて、社会に貢献したいと願っています。

理事長 奥田 義孝(おくだ よしたか)
慶應義塾大学商学部卒。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)、森永製菓に勤務。
現在、日本聾話学校理事(~2013年3月理事長)、エンゼル財団専務理事。
2003年よりフェリス女学院理事、2011年11月同理事長就任。

学院長メッセージ フェリス女学院学院長 鈴木佳秀

アメリカ改革派教会から派遣されたメアリー・E・キダー宣教師は、キリスト教の伝道と女子教育のために生きることを願い続けてこられましたが、主なる神がその祈りを聞かれ、彼女を宣教師として日本に遣わされたのです。メアリー・E・キダー宣教師は、イエス・キリストの福音のために、キリスト教に基づく女子教育のために生きることを願い、その生涯を献げた方です。

彼女のキリスト教信仰に基づく教育は、やがてFor Othersというフェリス女学院のモットーとして結実したと記されています。何かのために生きる人は多いのですが、誰かのために生きることの大切さが、このFor Othersという理念に込められていると思います。

フェリス女学院では、隣人愛によるこのような崇高な生き方を基盤に、若い人たちが育ってくださることを願っています。この精神が身についているならば、どのような場所に遣わされても、どのような環境の中にあっても、必ず周囲の人々に受け入れられ、喜ばれるはずです。フェリス女学院の卒業生の活躍を通して、主イエス・キリストの栄光が顕されると信じています。

学院長 鈴木 佳秀(すずき よしひで)
国際基督教大学教養学部卒。東京教育大学大学院文学研究科博士課程修了。
クレアモント大学院大学に留学。Ph.D. 取得(旧約聖書学専攻)。
新潟大学人文学部長、新潟大学大学院現代社会文化研究科長を歴任。
新潟大学名誉教授。
敬和学園大学学長を経て、2015年4月フェリス女学院学院長に就任。

ページトップへ戻る