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Society5.0においても活躍できる人になるために

●大学編「アカデミック・ライティング入門」
変化の激しい時代を生き抜くための普遍的なスキルを身につける

 フェリス女学院大学に2022年4月に開設された「学修サポートセンター」では、大学の学びに必要なアカデミック・スキルの修得を支援しています。レポートの書き方について個別指導が受けられる「ライティング・サポートデスク」に加え、2023年度からは1年次必須のCLAコア科目として「アカデミック・ライティング入門」の授業がスタートしました。CLA機構長・学修サポートセンター長の上原良子先生は、その背景について次のように話します。
 「世の中が大きく変化するなか、将来就きたいと思っていた仕事が、5年後、10年後に存在するとは限らなくなっています。同様に、いま学んだ知識が活かせるという保証もありません。そうした中、大学では、世の中の変化に適応し得る普遍的なスキルやリテラシーの修得が求められています。CLAコア科目の見直しにあたり私たちが特に重視したのが、情報収集力・思考力・表現力です。これらの力があれば、どのような時代になっても自ら道を切り拓き、変化にも柔軟に対応できると考えました。そして、そのベースとなる、読み・書き・表現する力を育てることを目的に、アカデミック・ライティング入門を1年次必須科目として設定しました。」(上原先生)
 学生がレポート執筆に必要なスキルやノウハウを体系的に学ぶ機会がなかった、という従来の課題も踏まえ、資料を集め、読み、理解し、自分の意見を考察し、論理的な文章にまとめて発表する…というアカデミック・ライティング入門のカリキュラムが構築されました。

学術的な文章を読み書きするための基本作法を、実践的に学ぶ
 アカデミック・ライティング入門は、半期・全15回の授業で、20〜30人程度の少人数で行われます。担当するのは、CLA講師・学修サポートセンター講師の阿曽歩先生です。
 「大学では、高校までとは異なり、学術的な文章を読み書きすることになります。アカデミック・ライティング入門の授業では、そのための基本となる作法を、2本の意見文を書くことを通して学んでいきます。」(阿曽先生)
 資料を読んで要約する、トピックについて自分の意見を著述するといった「書く」ためのノウハウや、資料の探し方、適切な引用の作法、問いの立て方といった学術的な研究手法の流儀について学びながら、実際に文章を書いて実践的に学んでいくのがアカデミック・ライティング入門の特徴です。意見文のテーマ設定にも、工夫がされています。
 「1本目の意見文のテーマは、『人文系学部の不要論争について』です。これから人文系学問を学ぶ学生たちに、人文系学問が社会的にどのような立ち位置にあるのかを理解・自覚し、不要論があるなか大学で学ぶ意義や価値はどこにあるのかを考えてもらいたいと思い、このテーマを選びました。また、2本目の意見文のテーマは、『学際的に学ぶ意義について』です。大学で分野横断的に学ぶ意義、幅広い教養を身につける意義について考え、自分の意見をまとめてもらいます。」(阿曽先生)
 学生は150字や400字程度の文章を書くことから始め、阿曽先生の添削指導を受けつつ、学期末に書く2本目の意見文では1600〜2000字の文章を書きます。最初は400字で苦しんでいた学生も、最後には2000字をしっかりと書き切ることができるようになるといいます。さらに、最後の2回の授業では、プレゼンテーションの技法について学び、自分が書いた意見文を発表します。
 「パワーポイントでスライドを作成し、発表と質疑応答を行います。発表するという表現技法をみがくことに加え、他の学生の発表を聞くことで、同じテーマでもいろいろな視点や書き方があることを学ぶ機会になることも意図しています。」(阿曽先生)

アカデミック・スキルの修得は、専門教育の拡充につながる
 今年度新たに始まったアカデミック・ライティング入門の授業に大いに期待していると、上原先生は言います。
 「学術的な文献を読んで要約する、文献や資料を適切に引用する、自ら問いを立てる、レポートや論文を書く…という基礎スキルが未熟な学生が多いことは、私たち教員にとっても指導上の課題でした。アカデミック・ライティング入門の授業により、すべての学生がこうしたスキルを身につけたうえで専門教育に進むことになるので、ゼミや演習などもより充実したものになると期待しています。何よりも、学生自身にとって、卒業後も役立つ一生モノのスキルになるでしょう。」(上原先生)
 学修サポートセンターでは今後も、学生のアカデミック・スキル修得支援に取り組んでいきます。アカデミック・ライティング入門の授業を受けていない2・3年次の学生に対しては、引き続きライティング・サポートデスクで個別指導を実施(1年生も利用可能)。週3日、昼休みの時間帯に図書館ラーニングコモンズにて開講しており、1人30分、阿曽先生によるマンツーマン指導が受けられます(予約制)。また、英語でのプレゼンテーション講座や資格取得のサポートなども行っています。「学生のためのセンターなので、積極的に活用してほしい。私たちも、アピールしていきたい。」と上原先生。今後のさらなる展開に期待が集まります。

2023年度前期「アカデミック・ライティング入門」履修生の声
・わかりやすい授業をありがとうございました。大学に入って1 番不安だったのが論文等だったので助かりました。
・レポートをいつまでも手探りで執筆するのではなく、初めにこのような授業を受けることで今後自信を持って取り組むことができるようになりました。

●中高編「教養科」
 2023年度に始まった学校設定教科「教養科」。S1までに各教科で学んだことを生かしながら、生徒主体で総合的に探究できる場を提供するS2の選択科目です。「教養講座」と「実践教養」の2科目があります。少人数クラスの授業で、リサーチスキルや思考力の向上はもちろん、コミュニケーション能力・自己管理能力・やり抜く力など汎用的な資質・能力を身に付けます。新学習指導要領の実施に伴い、「深く広い学び」と「自ら学び、自ら考える」を重視するフェリスらしい教科を創ろうという趣旨で設置されました。
 「教養講座」 は、多様な分野に触れ、自分自身の興味関心を探る科目です。生徒と相談しながら、月ごとに探究テーマを決めます。4月から10月のテーマは、哲学対話・コミュニケーション・ジェンダー・メディア・法でした。生徒は、自己の在り方・生き方を深く考えながら、関連する資料を読み、自ら問いや仮説を立てるところからスタートします。その後、大学・企業・公的機関から招聘したゲストと共に、ワークショップ形式で学びを深めます。多彩なゲストとの出会いが、生徒が将来を考えるきっかけへとつながっています。「教養講座」はキャリア教育の要素が大きく、進路に悩む生徒にもお勧めです。中高HPの「フェリスの丘より」に、生徒が作成した記事が掲載されています。
 「実践教養」は、PBL (Project Based Learning ) 型の科目です。広く社会に目を向けて課題を見つけ、その解決のために、少人数のチームで探究します。 今年度のテーマは「ウェルビーイング」。 年度の初めに「私のつくりたい未来展」と題して、ウェルビーイングな世界をカラフルな粘土と紙を用いて表現しました。プレゼン・対話・文献調査を通してさらに考察を深めたうえで、ウェルビーイングな世界の実現のためにアイディアを提案するプロジェクトを立ち上げました。チームごとに思考の枠組みを広げて模索し、創造性を発揮。成果として、高校生が社会とつながる場を提供するサービス「EATALK」、若者の政治参加促進を目的とした教育プログラム「GOVOTE」、文房具を使った貧困問題の周知システム「紙と鉛筆」を提案しました。
 熱量が高く、休み時間中や放課後にもプロジェクトに夢中になる生徒たち。一方、教員はプロジェクトの推進に必要となるさまざまな学びのスキルを教授することで、生徒をサポートします。例えば、As is/To be 分析をした後に課題を絞り込む手法、議論を促進するファシリテーション、コミュニティボールを用いた哲学対話、合理的な意思決定を妨げるサンクコスト効果、プロジェクト管理のためのロードマップ作成、リフレクションのフレームワークなど。対話促進ツール「えんたくん」も用いました。直径1mの円形の段ボールを数人で膝に載せて支え、円卓のようにくるくると回してアイディアを分かち合いました。 地理の授業に参加し、GIS(地理情報システム)の実習も行いました。
 社会の諸問題を解決するための一つの方法として、アントレプレナーシップについても学びます。起業してまもない企業を一人1社ずつ分担し研究を行いました。研究成果発表会は「実践教養カップ」と題し、目標を投資家からの資金調達と設定しました。各自が研究した企業の魅力を真剣勝負でアピールしました。「実践教養」では、探究の成果を発表する機会としてコンテストに参加したり、企業とコラボしたプロジェクトを進めることもあります。現在は、企業と新商品開発中で商品企画について学んでいます。
 各教科の枠を越えて知の探究を目指す教養科では、共に新しいことに挑戦する中で、汎用的な学力を伸ばし、地図のない世界を楽しみながら進んでいける生徒を育てていきたいと考えています。

第5回スライド抜粋

中高HP「フェリスの丘より」
【生徒作成記事】「教養講座」第1回企画
~哲学対話の沼へようこそ~

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