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フェリスの平和学習

 フェリス女学院では、唯一の戦争被爆国である日本、その中でも特に広島に焦点をあて、平和学習を行っています。学生・生徒が過去の歴史と向き合い、「今を生きる自分たちにできることは何か」を問う大切な学びとなっています。

【中高での取組】

 中高の地歴公民科では、1985年から高校1年生を対象に2泊3日の広島研修旅行を行っています。これが始められたのは、当時、米ソ対立の再燃により史上最多の7万発という核兵器が作られ、日本もまた軍備増強へと向かい始める情勢のなかで、核や戦争・平和について、生徒が広島を訪れ、学ぶことが必要と考えたからでした。
 それ以来すでに30年以上が経過しましたが、冷戦終結など国際政治の変化とともに、核問題も新たな段階に入ってきています。したがって、核と平和、国際社会における日本のあり方、諸民族の共存と国際平和の実現などについて考えるこの研修は、今なお意義があり続けるものと言えます。また、この研修によって生徒に願うのは、原爆を単に過去の歴史ではなく、自分たちが生きる現在および未来の核の問題として考えてほしいこと、また現地での広島女学院高校の生徒、被爆者・専門家の方々との交流を通して、平和のために自分は何ができるか、ということを考えるようになってほしいということです。
 今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため広島に行くことはできず、オンラインで「横浜でヒロシマを考える3日間」として実施することとしました。本来は現地に行ってこそ体感できるもの(資料館の展示見学、平和公園の碑めぐり、当事者から直接話を聞くなど)があるわけですが、今年度はそれが叶わないため、いかに生徒に実感をもって原爆を受け止めてもらえるか、ということが一番の課題でした。例年通りの内容でオンライン講演をしても、生徒は聞くだけで受け身となり、関心を持てずに終わってしまう危惧もありました。そのため生徒が主体的に参加できるよう、例年とは違うプログラムも考えて工夫しました。
 例えば原爆被害の実相に迫るために、広島平和記念資料館から借りたパネル展示、東京在住の被爆者山田玲子さんの来校講演、記録映像、現地ガイドによる原爆ドーム周辺のオンライン実況案内などを取り入れました。また生徒参加型の企画としては、核兵器禁止条約等について平和学習委員がプレゼンテーションをしたり、戦前・戦中の写真のカラー化に取り組む大学生の庭田杏珠さんの講演や生徒の意見発表を踏まえて、平和実現のため自分たちに何ができるかを全体で意見交換しました。さらに卒業生で国連事務次長の中満泉さん(在ニューヨーク)への核軍縮などについてのインタビューも、生徒たち自身が行いました。
 結果として3日間、盛りだくさんのプログラムとなり、生徒たちも大変熱心に取り組んでくれました。感想を見ると、「この3日間で知らなかったことをたくさん学ぶことができ、今の世界の現状・平和についてよく知り、また考えることができた」「今まで戦争・原爆のことを歴史の一部分として自分とは関係のないことと考えていたが、過去と現在と未来をつなげて考えることが重要だと思った」「被爆者の体験した苦しみを伝えていくことこそが、平和を実現する第一歩であり使命であると強く感じた」などとあり、今回の平和学習がそれぞれの心に大きく響いたことがわかり、大変うれしく思いました。(中高 地歴公民科)

【大学での取組】

 大学では、留学生と日本人学生が一緒に平和について学ぶ「広島研修旅行̶ジャパンスタディツアー」を毎年度実施しています。2020年度で22回目を迎えた伝統行事です。
 今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、直接広島を訪れることはできませんでしたが、原爆遺跡保存運動懇談会のご協力を得て、オンラインによる「広島平和研修」を実施することができました。
 オンラインでの開催の利点は、世界各地と容易につながることができる点にあります。今回の「広島研修旅行̶ジャパンスタディツアー」ではこうした利点を生かして、新型コロナウイルス感染症の影響で本学への留学をやむなく中止した交換留学生にも広く参加を呼びかけ、オンライン上で多くの参加者が集うことができました。
 例年、「広島研修旅行̶ジャパンスタディツアー」は、大学における事前学習と2泊3日の広島市内および広島市近郊への研修旅行から構成されていますが、今回は以下の計3回の研修企画から成るプログラムとして実施しました。

◆ 第1回11月19日(木)
「戦争とは何か」をテーマに意見交換の時間を持つとともに、平和記念資料館の資料を手掛かりに「原爆とは何か」、「原爆が残したものとは何か」について学びました。
◆ 第2回11月26日(木)
「戦争と平和」について、映像を通して考えました。
◆ 第3回12月12日(土)
被爆者の方からお話を伺ったのち、原爆遺跡保存運動懇談会のみなさまとともにディスカッションの時間を持ち、「私たちが受けてきた戦争平和教育」、「未来のために私たちができること」をテーマに活発な意見交換ができました。

 被爆者の方から、当時の壮絶な体験談や今も原爆後遺症で苦しんでいらっしゃる体験を直接伺うことで、学生たちは「戦争や核兵器が社会、世界にもたらす悲劇」と「平和の意味・価値」について、改めて考える貴重な機会を与えられました。プログラム3日目に実施されたディスカッションでは、「原爆や戦争の恐ろしさを次世代に語り継ぐことの大切さ」、「被爆者認定をめぐる諸問題に広く社会が注目を向けることの必要性」、「今も続く問題として原爆、被爆について考えることの重要性」、さらには「他者を理解しようとする姿勢の大切さ」や「民主社会を守るために何をすべきか」といったテーマにまで及びました。ドイツ、インドネシア、台湾といったさまざまなバックグラウンドを持つ学生たちとのディスカッションだからこその幅広い意見の交換が行われました。
 また今回、「広島研修旅行̶ジャパンスタディツアー」の関連企画として、株式会社mintが提供する広島平和遺産を巡るオンライン修学旅行企画にも参加しました。平和公園や原爆ドームなど現地からカメラを通してご案内いただきながら、「平和」について、そして「広島復興の歴史」について臨場感持って学び、考える貴重な時間となりました。
 国際センターでは、これからもさまざまな工夫を駆使して、グローバルな視点から平和について語り合いともに学ぶ機会を提供していきます。(大学 国際課)

リモートインタビューの様子

ジャパンスタディツアーちらし

オンライン研修の様子

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