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フェリスのこれまでと未来

大きな変革期を迎えているフェリス女学院。
2024年4月には、フェリス女学院大学に小檜山ルイ学長が、フェリス女学院中学校・高等学校に阿部素子校長が就任しました。
学院長秋岡陽を交え、「フェリスのこれまでと未来」をテーマに鼎談を行いました。

パイオニア精神を引き継ぎ、新しいことに挑戦する学院に

秋岡 フェリス女学院は2020年に創立150周年を迎え、ミッションステートメントを定めました。メアリー・E.キダーによる1870年の創立当時は、女子教育に理解のない時代でした。そこに果敢に乗り込んだ彼女の勇敢さ、パイオニア精神を引き継ぎ、次の150年は自己変革を進めながらさらに新しいことに挑戦していくことを、ミッションステートメントで宣言しています。実際に、中学校・高等学校でも大学でも、新しい動きが出てきています。具体的な取り組みについてそれぞれお聞かせください。
阿部 中高では、昨年度の後半に、新しい時代を見据えて教員全員が参加するプロジェクトを行いました。155周年に向けて、フェリスがどのような学校でありたいのか、どのような生徒を育てたいのか、意見を出し合いました。またワーキングチームを作って課題を分析し、新たな取組みの知恵を出し合いました。短期海外研修など、実現に向けて準備を進めているものもあります。また、興味関心もペースも多様な生徒たちの力を豊かに伸ばすには、きめ細やかな教育が必要です。そうしたことを踏まえ、2025年度に向けカリキュラム改訂を予定しています。

秋岡 カリキュラムの特徴や方向性はどのようなものでしょうか?

阿部 下級生の間に、その後の学びを支える学習習慣や、土台となる力―知識・技能を身につけ、それらを用いて思考し表現する力―をしっかり身につけられるようにする。そのうえで教科を超えた探究的な学びに時間をかけて取り組んでいける環境を整えたいと考えています。フェリス生の知的好奇心や対話が好きなところをうまく生かして、それぞれの問いを見つけて探究してほしいと思います。こうした学びを進めるため、また、それらを支えるICTの活用のため、新たに教育企画部を新設しました。 

秋岡 私は中学校・高等学校の礼拝に参加していて学校にもよく足を運ぶのですが、阿部先生をはじめ熱意ある先生方ばかりなので、カリキュラムの改編にも大いに期待しています。

教養と実学の2本柱で、社会を変えていく人を育てる
秋岡 大学は2025年度から新しい学部ができ、大きく変わりそうですね。

小檜山 はい。既存の3学部を「グローバル教養学部」1学部3学科9専攻へと改組します。ご存知のように、少子化や女子大の不人気により、今や女子大は危機に直面しています。女性の生き方が変わり、経済的に自立する女性が増えるなか、これまで通りのやり方・あり方では生き残れない瀬戸際まで来ており、フェリス女学院大学にも大胆な改革が求められています。私が、初の学外からの、そして初の女性の学長として着任したことは、それだけ大きな変革が求められている証しだと理解しています。

秋岡 小檜山先生に理事として構想に関わっていただきましたが、どのような理由から1学部にするのでしょうか?

小檜山 社会の変化に機敏に対応するためです。新しい学部をつくるためには認可申請から認可まで時間がかかりますが、1学部であると学科や専攻は比較的柔軟に変えることができます。フェリスが伝統的に大切にしてきた教養的な学びを維持しつつ、時代に合わせた教育を行うには、この体制がベストだと判断しました。注目していただきたいのは3つの学科「国際社会学科」「心理コミュニケーション学科」「文化表現学科」と9つの専攻です。それぞれの学科・専攻の内容は特設サイト等をご覧いただきたいのですが、いずれも生涯働き続けることをめざす人にそのための能力をつけてもらうことを目標としています。

秋岡 時代の変化に合わせて学部を増やす大学が多いなか、発想の転換ですね。社会で働くための能力というと、従来の教養に重きを置いたフェリス女学院大学の印象とは大きく異なるように見えますが、どうですか?

小檜山 一見すると、そうかもしれません。実学を積極的に取り入れ、企業や地域との協働プロジェクトなど社会連携も進めていきます。一方で、社会で働くうえで必要になるのは実用的な知識やスキルだけではありません。そもそも求められる知識やスキルは時代に応じて変わりますから、それだけでは10年後、20年後には使い物にならない可能性だってあるわけです。大切なのは、生涯学び続ける姿勢や知りたい・やってみたいという知的好奇心、そして、幅広い教養も不可欠です。つまり、フェリス女学院大学がこれまで培ってきた高度な学問や教養の部分は維持しつつ、これまで不足していた実学も取り入れる、ということ。グローバル教養学部という名称にも、その思いを込めています。

秋岡 なるほど。どのような人を育てたいとお考えですか?

小檜山 言うならば、〝働くお嬢様〞でしょうか。従来のフェリス女学院大学の〝お嬢様〞的なイメージを完全に壊すつもりはありませんが、古い女性観はアップデートしたい。自分の意見を積極的に発信し、女性の視点を社会に反映できる人、社会を変えていける人を育てたいと考えています。

自分を愛し、他人を愛す。
新しい“For Others”へ

秋岡 変わることに対して否定的な意見もあるかもしれませんが、明治時代に創設されて以来、フェリス女学院は常に時代とともに変化・進化してきました。社会情勢にアンテナを張り、その時代に必要な女子教育を提供してきたのです。一方で、キリスト教精神に基づく女子教育という土台は変わることはありません。“For Others”を教育の中心に据えることを、変革期の今だからこそ、改めて強調したいと思います。

阿部 与えられた賜物をどう生かすのか。自分のためだけでなく、他者のために用いるということは、礼拝でも折に触れて語られているように思います。先ほどお話したプロジェクトの中でも、どのような生徒を育てたいかと考える時に先生たちから必ず出てくることでもあります。そして、卒業生の話などを聞くと、やはりフェリスの6年間で知らず知らずにこの“For Others”が浸透しているのだと感じることがあります。ですから、一人ひとりの生徒が、興味関心を生かして自らの賜物に気づき、それを磨いていけるような学びの機会をますます充実させていくことが、私たちの課題であると捉えています。

小檜山 歴史的に、長く女性は犠牲と奉仕を強いられてきました。私はフェミニストですので、女性に向けて“For Others”と言うと、そのニュアンスを含んでしまうと感じます。聖書に自分を愛するように人を愛せとありますが、“For Others”のためには、まずは自分を愛せるように、〝セルフエスティーム(自信・自己肯定感)〞をもてるようにならなければなりません。私は、“For Others”を教育の中心に据えることの意味を、そう捉えています。

秋岡 なるほど、興味深いですね。そもそも“For Others”とはどういうことなのか、生徒・学生も教職員も一人ひとりが改めて考えていくことが大事なのかもしれません。私が学院長として願うのは、一人ひとりが素晴らしい賜物を持っていることをみんなで認め合い高め合える学校、生徒や学生が豊かに伸びやかに成長できる学校になること。歳を重ねた今では、礼拝などでさらに確信を持って「神様は君たちを愛しているんだよ」と言えるようになりましたが、やはりこれは揺るがないキリスト教の教えです。誰もが愛される存在であるという前提に立ち、生徒や学生一人ひとりが自分を愛すること、自分に自信と誇りをもつことができるような学院になることを願っています。

「私とフェリス」

小檜山 ルイ
 私はフェリス女学院中学校・高等学校の卒業生です。1970年に中学校に入学し、言いたい放題、怖いもの知らずの6年間を過ごしました。大学院生時代に執筆した博士論文では、フェリス女学院の創設者であるメアリー・E.キダーについて取り上げ、彼女をはじめとしたアメリカの女性宣教師について研究しました。そんな縁のあるフェリス女学院大学ですが、まさか自分が学長に選ばれるとは夢にも思っていなかったので、大変驚きました。

阿部 素子
 フェリス女学院中学校・高等学校で社会科の教員を30年近く務めてきました。就職が決まって文化祭を訪れたのですが、そのときに生物部が豚の解剖をしていて、たくましい姿に驚いたことが強く記憶に残っています。実際、物怖じしない生徒が多く、部活に、勉強に、有志の活動に、一生懸命に取り組む彼女たちの姿に刺激と元気と勇気をもらっています。

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