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自分の眼で世界を見る

自分の眼で世界を見る

 現代の日本の美術教育の実態について、正直に述べてしまえば未だ根強い誤解や認識の違いがあるように思われます。つまり、学校の「美術」の授業が「作品を上手に作る」という技術習得を目標にしているという解釈が日本では払拭されていないのではないかと感じるのです。実際に授業においても、生徒に「美術」に関して質問を募ると、(どうやったら写真のようなリアルな絵が描けるのか)、(立体感を出すためにはどうしたらいいか)というような、技術面での質問が多く寄せられています。ものを「上手に」作ること、それ自体は大事なことです。しかしながら、美術教育の本質的な目的は「表現と鑑賞をとおして自分自身を知る」ことにあると言えます。対象物を(みて、かいて、つくる)ことは、「あなたはその対象を、どう感じ、どう考え、どのように表したいのですか。」と問われていることと同じです。自分自身が一体何を感じ、考えているのかということは、課題に対して能動的に取り組まなければ見えてきません。フェリスの美術では「自分を知り、自分なりの世界の見方」を大切にしています。
 フェリス生は興味のある事柄に対してとことん追求する姿勢を持っています。よく、「自分には集中力がない」という悩みを耳にしますが、決して集中力がないわけではありません。
 「興味の対象」を自分で見つけることで、どんなアプローチであっても、最後までやりぬく力は誰にでも備わっています。3年間の必修美術の中で、J3では課題のモチーフ選びから自分で行うことを大事にしているデザイン分野の課題「ことばをながめる、ことばとあるく」があります。この課題のタイトルは、群馬県にある太田市美術館で2018年に開催された「ことばをながめる、ことばとあるく」から来ています。同展は、一人の詩人作家の文章を複数人のグラフィックデザイナーがデザインするというものなのですが、デザイナーによって同じ文章でも表現の仕方が全く異なるという内容でした。この展覧会の内容を応用した課題をJ3では行っています。生徒には、好きな(ことば)を選んでもらい、そのことばを(文字デザイン)していくのですが、好きなことばは、小説、詩、歌、ことわざ、漫画のセリフなど、自分の好きな(ことば)であればなんでも構わないことになっています。さらに配布する画用紙にどのような表現でも良いので、自分がそのことばを(どう感じるのか)を考えながらデザインしてもらうので、立体作品になる生徒もいれば、紙に描くだけではなく、文字をくり抜いたり貼り付けたりとする生徒も現れ、実に多様な表現方法を見ることが出来ます。
 同じ(ことば)を選んだ生徒であっても、感じ方が違えば全く異なった作品になるところも興味深い点と言えるでしょう。作品の(動機)となる「ことば」を自分自身で「選んだ」ということから、生徒は最後まで責任を持って作品制作をしています。
 「上手く作れるかどうか」よりも、「自分はどう感じ、どう考え、どのように世界を見ているのか」を大切にし、鑑賞を通しても他者の世界観を認め合い、さらには新しい視点を発見することをフェリスの美術では目標にしています。

(中高 美術科)

ジャンル:楽曲 曲名:スターチャート アーティスト:nano.RIPE

ジャンル:小説 書籍名:ハリー・ポッターと死の秘宝
著者:J.K. ローリング 著

ジャンル:漫画 書籍名:名探偵コナン 犯人の犯沢さん
著者:かんばまゆこ 著

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