

■生きていく土台に寄与する
フェリスの国語教育について、かつて次のように書かれました。「豊かな感性を育て磨くという作業を土台として、主体的に学び、ものごとの真髄を見極める姿勢を大切にしています」(『奨学会ニュース80号』2013年2月)。十年以上が経った今、生成AIの登場によって、この文の意味するところが身に迫ってきます。思考の根源であり、他者とのつながりの源泉となる言葉の力を陶冶する国語教育が、AI時代を生きる生徒たちの生涯にどのように寄与していくのか、私たちは日々考え続けています。
■「自分の言葉」にこだわる
古典・現代文いずれの分野においても、徹底的に言葉にこだわる姿勢を貫いています。J1では口語文法と初歩的な古典文法を学ぶことで、六年間の基礎となる言葉の仕組みをしっかり身に付けます。さらにJ2からS1にかけての古典文法では、一語一語を丁寧に解釈し訳す力を養います。一つ一つの言葉に虚心坦懐に向き合うことは、現代文の分野でも同様です。根拠に基づき論理的に読解し、論述する力を鍛えます。正確に理解し、表現しようとする努力の積み重ねによって、はじめてものごとの真髄が見極められるようになるのではないでしょうか。
他者の言葉に鋭敏であることは、「自分の言葉」へのこだわりにつながります。AIの生み出す表現は整えられた「それらしい」ものに感じられますが、「自分の言葉」は均質で平準化された言葉とは異なります。数多ある言葉から自分だけの言葉を探し選び取り語るという営みは、思考することそのものであり、自分の世界を打ち立て押し広げるために、決して手離してはいけない唯一の術なのです。
■今こそ、文学の力を
AI時代に必要な力としてつとに指摘されているものは、人間の感性です。文学は時空を超え、生身の人間の実相を鮮やかに照らし出します。授業では、作品の普遍的な魅力を味わうとともに、時代の文脈のなかで読解することを大切にしています。時代ごとの政治・文化・思想を知るために、文学史にも力を入れています。
教員は教室で物語と生徒の間を媒介する、いわば語り部の役割を果たします。フェリスの語り部たちは、それぞれ色が異なりそれぞれに濃いが、総じて文学への愛にあふれている、そのことを最もよく知っているのは現在およびかつての生徒たちだと思います。
新たな取り組みとして、2025年からJ3・S1では作家・作品のゆかりの地をめぐる文学フィールドワークに挑戦しました。S2国語表現でも近隣にある神奈川近代文学館を毎年訪問し、文学者の生きた証を体感します。フィールドワークは文献調査・聞き取り調査と並ぶ重要な調査手法です。
文学との出会いを通して、世界や他者に対する豊かな感性を育み磨いてほしいと願っています。

フィールドワークの成果をスライドでプレゼン(S1現代文)