フェリス女学院中学校・高等学校は、2020年に創立150周年を迎えました。1870年にメアリー・E.キダーが横浜外国人居留地のヘボン宅で教え始めてから今日まで、この学校の歩みを神様が導き守ってくださいましたことに感謝いたします。
本校の教育の柱は、キリスト教信仰と女子教育です。メアリー・E.キダーから始まった本校の女子教育は、時代と共に変わってきましたが、それはそのまま女性をめぐる社会の変化を反映したものであったと言えましょう。その間、今日まで、本校は“For Others”を胸に、社会のさまざまな場で活躍する女性たちを世に送り出してまいりました。
社会の変化が加速化している現在、将来のことを予測するのは大変難しいことですが、今後、社会の中での女性の活躍がますます求められるようになっていくことは間違いないように思われます。そのような中で、女子教育の重要性が、今、あらためて見直されていると思います。自ら切り拓いていく力を持った女性たちを、これまでと同じように世に送り出していきたい。それが本校の願いです。
本校は、創立以来、常に外に向かって開かれた教育が行われてきた学校です。グローバル化ということがよく言われるようになりました。これから社会に出て行く生徒たちには、そのような社会の中で生きていく力が求められます。それは、大きな視野に立ち、価値観の違いを超えてどのような人たちとも交流できるような力、マニュアルに頼らず、その時その時の状況に柔軟に対応できる力であると考えられます。本校は、今後も、これまで以上に、そうした力を伸ばす教育を行っていきます。英語教育の充実はもちろんのこと、さまざまな教科学習でも力をつけることができます。海外研修の在り方も模索しています。今、教育の現場には、グローバル教育のほか、アクティブラーニング、生徒のコミュニケーション力・プレゼン力の向上など、さまざまなことが求められています。これらの求めに対しても、フェリスらしく対応してまいりたいと思います。
本校の教育の柱の一つは「学問の尊重」です。本校では「深く広く」学ぶことを学習の基本姿勢にしてきました。「深く」とは、それぞれの分野を深く掘り下げて勉強するということです。「広く」とは幅広く勉強する「教養主義」のことです。今、大学入試改革の動きがあります。深く、かつ、総合的に考える力や表現する力を重視しようとする動きです。本校の学習は、まさに、そのような力を育てることを目指してきました。そして、これからも目指していきます。本校の教育は大学合格をゴールにはしていません。その先の将来にわたっての力を付けさせることこそが「フェリスの教育」です。
本校は自由な学校です。その自由な校風が、これまで、世界の幅広い分野で活躍する数多くの卒業生を産み出してきました。フェリスの大切にしている「まことの自由」は、“For Others”へ道を開く自由です。この自由な校風をこれからも大切にしていきます。
学院150年の伝統を未来に継承するため、フェリス女学院大学はグランドデザイン「Ferris Univ. 2020 」を策定しました。2020年に向けて、次のような改革を推進。将来にわたり、つねに「新しい時代を切り拓く女性」を育成する伝統校としての姿を鮮明にしていきます。
フェリスの伝統であるリベラル・アーツ教育。それを21世紀型の教養教育として「全学教養教育機構(CLA:Center for the Liberal Arts)」を中心に展開します。全学部の学生を対象に、4年間を通じた体系的なカリキュラムを編成し、「新しい時代を切り拓く女性」を育成。2017年度から、高い言語運用能力と幅広い教養を身につけ、しなやかに他者と共生しつつ、21世紀の新たなステージを切り拓いていくためのカリキュラムがスタートしました。
全学教養教育を推進する拠点として、専用の校舎「CLA棟」を2016年度に整備しました。アクティブラーニング対応教室も充実。新しい教育に対応した最新設備を整えています。国際センターも、この新しいCLA棟のなかに設置されています。
CLAに新設される実践教養探求課程。課題解決型の授業(PBL:Project-Based Learning)を効果的にとりいれ、大学での学びと社会との接点を意識しつつ、現代社会で求められる教養について主体的・体験的に学びます。課程修了者には、就職活動開始前の時期に修了証を発行。就職活動に生かすこともできます。
キャンパス内外の国際交流活動をさらに活性化し、留学を志す学生と受入留学生の支援を担う「国際センター」を2016年度に整備しました。フェリスの国際化のシンボルともなる同センターをCLA棟内にオープン。学生自習スペース、グループ学習室、留学生ラウンジなども併設されます。
創立者キダーから託された「キリスト教の信仰に基づく女子教育」と、学院150年の歴史のなかで醸成された教育理念「For Others」をさらに明確かつ具体的に継承するため、CLA棟に、フェリスの歴史資料を展示するとともに学生・来訪者の集いの場となるウェルカムセンターを設置。また、「建学の精神」と「教育理念(For Others)」の象徴的な実践活動センターとして、コイノニア・コーナー(宗教センター)、ボランティアセンター、バリアフリー推進室も整備し、さらに活動を活発化させます。
「卒業後も一生にわたって女性をサポートする」をコンセプトに、女性のライフ・ステージごとのさまざまな課題解決を支援するキャリア教育プログラムを整えます。同窓会との連携も強化。さまざまな年代の女性のニーズに対応するジェンダー・エンパワメント教育を目指すと同時に、真のユニバーサル・アクセスが可能な教育環境を整えます。