1929年竣工当時のカイパー記念講堂
フェリス女学院山手キャンパス1号館のカイパー記念講堂正面には、高さ1.5m、幅2.5m、150枚の異なった色彩のガラスからなる美しいステンドグラスが設置されています。その子羊を抱いたキリストのステンドグラスの前で中高の生徒と教職員により、毎朝礼拝が守られています。
関東大震災後の1929年4月に落成したカイパー記念講堂には、ステンドグラスはまだ設置されておらず、無色のガラスが填められていました。その後、アメリカ改革派教会婦人伝道局のメンバーとして活動していたミセス・エリス・ヒルが、震災で犠牲になったカイパー校長の死を悼み寄贈してくれました。その下部には次のように刻まれ、生徒たちの心に悲しい出来事とその想いを投げかけています。
カイパー記念講堂のステンドグラス
さて、ステンドグラスが設置されて間もない時期に刊行された 『フヱリス和英女学校六十年史』(1931年刊)によると、このステンドグラスはマタイによる福音書18章12節の「迷い出た羊」を題材にしたものであると記されています。また、当時在校していた生徒、教職員たちはもちろんのこと、その後在籍した生徒たちにもそのように伝えられてきました。
一方、1984年、当時中高の校長を務めていた氣仙三一先生は、『奨学会ニュース』(1984年7月発行)の中で、これはヨハネによる福音書10章11節の「良い羊飼い」を表したもので、この絵柄の原画は、ドイツ人の画家プロックホルスト(1825~1907)の「良い羊飼い」(The Good Shepherd)であると記されました。
そして『フェリス女学院150年史資料集第3集-RCA伝道局報告書に見るフェリス』(2015年3月刊)の1930年報告書の中に、このステンドグラスに関する記述があります。1929年のクリスマス礼拝でステンドグラスがお披露目された時のことを、次のように報告しています。
さらに、このステンドグラスは、1929年に竣工したホープカレッジのチャペルのステンドグラスを制作したニュージャージー州パターソンのペイン・スタジオに依頼し、クリスマスに間に合わせたことが報告書の中にはっきりと記されています。
「迷い出た羊」、「良い羊飼い」、いずれにしても、このステンドグラスは関東大震災で亡くなったカイパー校長の献身とキリストの愛を私たちに語りかけているものであることには変わりはありません。
2002年1号館の建て替えに伴い、ステンドグラスは学院が歩んできた歴史とその想いとともに新しい講堂に受け継がれました。フェリスで学んだ者たちの心に深く刻まれ、卒業後も常に母校と自分を、そして同窓生同士をつなぐ大切な絆になっています。そして、これからもその想いはひとりひとりに受け継がれていくことでしょう。