学びの風景

30年の実績がある日本語教員養成講座

30年の実績がある日本語教員養成講座


日本語教育学の知見と多文化共生の観点
 本学の日本語教員養成講座は、1993年に「日本語教育科目群」が設置されたことに始まる。1996年には「日本語教育実習」科目が開講され、日本語教員養成講座第1期生12名が副専攻課程を修了した。その後、1999年には主専攻課程が、2003年には本学独自の専修課程が開設され、また、2005年、2016年には大規模なカリキュラム改革も行われ、現在では専修課程(最低修得単位数:60単位)、主専攻(45単位)、副専攻(30単位)の体制を採っている。ディプロマポリシーとしては、次のような人材の養成を掲げている。 
(1)日本語・日本文化に関する幅広い知識や教育実践力を兼ね備えた人材。
(2)日本語を学ぶ多様なバックグラウンドをもつ人々の生活や歴史に寄り添う視点をもったグローバル社会で幅広く活躍できる人材。
 科目の多くは文学部日本語日本文学科において開講されているが、他学部・他学科生や科目等履修生による受講も可能となっており、現行のカリキュラムは、Ⅰ群(主に日本語に対する学びを深める科目群/「日本語学概論」など)、Ⅱ群(日本語教育に関する科目群/「日本語教育学概論」、「日本語学習のコースデザイン」、「日本語教育の教材分析」、「日本語教授法」など)、Ⅲ群(日本社会や外国につながる人々に関する理解を深める科目群/「在日外国人」など)より、それぞれの課程の修了要件に合わせて必要な単位を修得する形となっている。なお、「日本語教育実習1、2」という実習科目も開講されており、その授業の一環として、近隣の日本語学校や、台湾、中国の協定大学にて1〜2週間の校外実習も行っている。また、「地域日本語教育実習」や「年少者日本語教育実習」などの実習科目も展開しており、教育現場での学びも重視している。

活躍する修了生たち
 科目群設立から今年で30年目を迎え、これまでに送り出した修了生は約1200名(2022年度末時点)となった。毎年30〜50名程度の修了生がおり、日本国内の大学や日本語学校、外国人学校などの教育機関はもちろん、タイやインド、メキシコなど海外の教育現場で日本語教師として勤務している修了生もいる。また、中学校や高校で国語や英語の教諭として勤務する傍ら、外国につながる生徒の日本語の補習も担当する修了生も増えてきた。このほか、企業や役所など教育現場以外で本講座の学びを生かしている者も多数見られる。また、近年では、卒業後しばらくして科目等履修生として授業を受講し、修了証を得て、日本語教師として第二のキャリアを築いていく修了生も見られるようになってきた。こうした動向は、専門職としての日本語教員が注目を集めるようになってきたこととも関係があるだろう。現在、日本語教師の国家資格化の議論が進み、2024年度には「登録日本語教員」という資格制度が成立する見込みとなっているが、今後ますます日本語教員への注目度は高まっていくものと思われる。

外国につながる人々への日本語支援活動
 さて、本学の日本語教員養成講座の特色の一つは、外国につながる人々が多く居住している神奈川という地域性を生かし、教育現場での実習や交流の機会を広く学生に提供している点である。例えば、前述の実習科目では、鶴見国際交流ラウンジ、NPO法人ABCジャパン、県立希望ケ丘高校定時制課程、飯田北いちょう小学校、上飯田小学校、社会福祉法人青丘社ふれあい館などにおいて、外国につながる学生の日本語支援活動に関わってきた。この他、NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ(Me-net)との共催で、外国につながる高校生のための進学イベント「大学へいってみよう」の企画・実施(2017年)、いちょう団地で活動している「多文化まちづくり工房」との共催で、区内のカンボジアにつながる子どもたちとその保護者、本学学生との交流会の企画・実施(2019年)なども行ってきた。今後も地域と連携し、地域の課題にコミットしつつ、受講者の学びも深めていく多様な機会を創出していきたいと考える。

[2019~2022年度履修者:修了生]
2023年3月 文学部日本語日本文学科卒業
井土 優梨花 YURIKA IDO

■はじまりは姉の助言
フェリスに通っていた姉もこの講座の修了生でした。私の入学が決まった時にこの資格は取った方が良いと勧められ、決めました。朝鮮語インテンシブコースも履修していたので、1-2年次の時間割はなかなかハードでしたが、うまく履修計画を立てれば両立も可能でした。
■就職活動では面接官との会話のきっかけに
この講座での経験や日本語教育ゼミでの取組み事例は、エントリーシートでも注目されました。面接中の会話の糸口になることも多くありました。教壇実習には万全の準備で臨み、生徒のリアクションを確認しながら授業を進めることで、手ごたえを感じました。
■後輩にむけて
ここで得た学びは、日本語教員に関わらずどの業界に就職しても活用できると思います。例えば、災害時の案内一つにしても、日本語を母語としない外国人に緊急性を伝えるためにはどのような日本語を使えばよいかなど、生活の一部として学びが活きてきます。例えば、津波→「たかい波」、地震→「大きなゆれ」のように、平易な日本語に言い換えるだけで伝わることがあります。
今後の自分の人生の幅を広げてくれる資格として、ぜひ履修を考えてみてください。


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