学びの風景

体験型の学びで身につける発展的思考~数学の授業から~

J2幾何の授業風景

体験型の学びで身につける発展的思考~数学の授業から~

 フェリス生の数学への関心は、以前から高い傾向にあると言えるでしょう。得意、不得意に関わらず、数学は好きだ、という声を耳にすることもあります。また、わからないことがあると教師に質問したり、同級生と教え合う様子も、しばしば見かける光景です。
 数学のベースにあるものは厳密な論理体系です。紀元前300年頃に書かれたユークリッドの「原論」では既に、証明という論証を駆使して図形や数式の様々な普遍的性質が解明されています。一人一人異なる人間が、共通の規則のもと、自分の考えを表現し、時間をも越え他者の考えを理解して、何千年と積み重ねてきたものが数学です。
 J1、J2(注1)の「幾何」は、そのような論証の第一歩を身に付けるのに適した科目です。論証という抽象的な思考を、図形という具体的対象を用いて、いわば「共通のイメージ」を持って、思索を深めていきます。模型を見たり、コンパスと定規で作図することは「共通のイメージづくり」に効果的ですが、最近では作図アプリも選択肢に加わりました。そのことについて少しお伝えしたいと思います。 
 特に、J2の幾何は、扱える図形や定理が増え、作図アプリの活用効果が期待できる科目と言えます。作図アプリは、コンパスの代わりというより、図形の連続的変化を観察できる点で画期的です。かつては人の頭の中にしかなかったものを、今は動画で見られるようになりました。「どうしてもそうなってしまう」としか言いようがない図形の性質を、アプリを利用した「実験」の中から発見し、その理由を考える、という流れの授業が可能となります。厳密な論理体系に則り、発展させていくという流れも大切ですが、時には自然科学的に、現象を目の当たりにして、心が動く体験を通して、なぜ?と考えることも良いものではないでしょうか。きっと古代ギリシャの人々も、作画アプリは使えなくても、そうして発見した事柄があったはずです。生徒の皆さんが、同様のことを現代の機器を利用して追体験できたら意義深いことです。
 但し、PCを使う授業には様々な不具合も生じるため、ICT支援員の方にサポートをお願いしています。機器を使う授業は、様々な条件が揃ってはじめて行えるものです。PCはこれまでコンパスと同じく、理解のためのツールの1つ、という位置付けで、授業の中の一部で利用しています。J2の皆さんは、操作をよく習得してくれていますが、感想を聞いてみると、PCを持って来るのが重くて大変なのに、15〜20分しか使わないのは残念、という声が聞かれました。そうでしたか…。持って来るモチベーション向上のため(?)、まだまだ工夫が必要のようです。
 また、今まで頭の中でしか描けなかった関数グラフの連続的変化を見ることができるようになりました。高校の授業で使用する場合は、教師が操作し見せるという使い方が主ですが、先日は選択授業で、グラフ作成アプリを自分で使うという実習を行ってみました。一通りの操作を覚え、自由にグラフを描く頃には…さすがに既に様々な種類の関数を扱えるようになったS3生徒の皆さんの描くグラフは、ユニークなものも多く、不思議な曲線が画面上に現れました。数学は本来、自由な発想を広げていくところに楽しさがあるのですから、今回のことをきっかけに、こういったアプリを利用するハードルが下がり、発展的思考のサポートに気軽に使ってもらえればと思います。
 はじめにもお伝えしましたが、フェリス生の知的好奇心には感心させられます。近年では、数学に関するコンテストにチャレンジする生徒達も見受けられ、頼もしい限りです。新たなことを理解する喜びを感じ、心が動く経験ができれば、きっと新しい翼で、自由に羽ばたくことができます。これからも様々な方法、方向から生徒の皆さんと共に学んでいきたいと願っています。

(中高 数学科)
(注1)フェリス女学院では、中学校の生徒をJ、高等学校の生徒をSと呼称・記載しています。

J2幾何(作図アプリの操作を教えあう様子)


J2幾何(円周角の定理を題材に作図)


S3選択数学(生徒の作った3次元曲面)


S3選択数学(関数を用いてグラフを作成する様子)

フェリス女学院の今

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