学びの風景

SDGsを活かす教育~学生の関心を行動へ~

SDGsを活かす教育~学生の関心を行動へ~

 SDGs(持続可能な目標)という言葉は見聞きしない日はないほど身近になりました。本学のカリキュラムにも関連科目が豊富にあり、そのほとんどを所属学部に関わらず学ぶことができます。上原良子先生をコーディネーターに迎え、山本千晶先生、知足章宏先生から、学生はSDGsをどのように捉え学んでいくのかについてお話を伺いました。

 ■SDGsにより社会課題が可視化された
上原:SDGsにより社会課題に名前がつけられ、指標が示されたことで学生の反応に変化はありますか。
山本:例えば、私の学生時代(1999年頃)は、ジェンダーを学ぶということ自体が色を持つような時代でしたが、今は肯定的な価値を持つものとして受け入れられているように感じます。SDGsの指標の一つに「ジェンダー平等の実現」があることが、学生の取組みを後押しする積極的なメッセージになっています。
上原:授業に参加するうちに意識が高まったということもありますか。
知足:SDGsにより一人一人の問題だと意識されやすくなり、自分の行動で社会を変えよう、という発想が特別なことではなくなりました。学生とともに取り組む場を作ることや学生自身が実践することが、授業への積極性を高めていると感じます。表現の場があると学生はやりがいを感じ、楽しそうに取り組みます。横浜市地球温暖化対策推進協議会と協力し、「温暖化対策実行計画Zero Carbon Yokohama」(注1)に関わる活動にも学生と参加しました。
上原:演習科目でも、授業形式を輪読からグループワーク中心に移行しました。その方が学生は明らかに能動的になり、自分たちで課題を発見し解決策を見出しているようです。
山本:批判することに慣れていない学生たちは、「日本も頑張っている」と擁護する態度になりがちです。その時に国際社会と連動させて日本の現状を見ることで、課題が相対化され、ここがダメなんだと腑に落ちる。国際社会での取組みを学ぶことで、日本にどのような勧告がされているか、具体策として何をすべきか、驚くほど意欲的に問題を発見してくれます。SDGsによって課題が「見える化」されたといっていいでしょう。

 ■学生が参加したくなる場づくり
上原:2022年度後期授業「転換の時代を生きる2(13)」(国際問題へのアプローチ)は、社会課題に関心のある学生への入門編として役立ててほしいです。この授業では、新聞を気軽に閲覧できるように、スマホアプリを紹介しています。Le Monde(ル・モンド)や海外(外国語)のラジオ、ニュース番組が携帯電話で気軽にアクセスできると、学生の反応は非常に良いです。食料自給率やバーチャルウォーターなど、食や資源、畜産や水輸入国という身近な話題を取り入れています。学生の学び方に我々も歩み寄ると、手ごたえを感じますね。
知足:ゼミで学んだことを、他大学と合同発表や横浜市の大会に出場、企業との連携(注2)といった、他者に成果を見られる場を設けると、生半可なことはできないという緊張感が生まれ、目を見張るほどの力を発揮します。協力先との調整には私自身苦労も多いですが、学生への教育効果が高いので、可能な限り学外と協働の場づくりに努めています。
上原:学生が積極的に学べるしかけを教員が設けるということですね。
山本:授業では、女性に対する暴力、ハラスメント等の判例を文献で知るだけでなく、当事者の方の経験を直接伺う機会を用意します。学生は自身の経験と照らし合わせ、過去の被害や不快な経験は自己責任ではなくジェンダーの問題に起因するのだと気づきます。日常の中にある嫌な経験や友人から聞いた話のモヤモヤが具体的な名称となり、自分だけでなく社会全体の問題だと知った時、一歩踏み出せるようになるのです。
上原:知識を身につけることがパワーになる。これこそが大学でSDGsを学ぶ意義なのだと思います。

■学生の潜在的な力を伸ばすために
知足:顧問を務めるフレンドリーグルー プ(Ferris S.T.E.P)では、コロナ禍でもできることを学生達が模索して、 SNSでの「おうち時間SDGs」発信、 横浜市環境創造局「はじめよう!横浜でエシカル消費」キャンペーン(注3)共催など積極的に取り組んでいます。 他大学の学生と比較しても、フェリス生は独創的なアイデアを創出・具現化する点で非常にポテンシャルが高く、相手を尊重したうえで建設的な意見を述べることができます。コンペのような場でも緊張せずに発信する表現力にも非常に優れている。こういう力をさらに伸長させたいと感じています。
山本:私の授業に参加する学生も、主張がはっきりしていて、問題意識を持つことができる人が多くいます。ただ、ジェンダーという言葉は知っていても、その知識が圧倒的に足りていないように感じます。問題だと感じたその思いを、アカデミックの中でどうアウトプットしていけるか訓練すること、論理的な一貫性を与えることが教員の役割だと考えています。突破力がある人を社会に送り出したいです。

―――女子大ゆえに、性差別などジェンダーに関わる問題について安心して話せる環境と言えるでしょうか。
知足:女子大は、学生がこれらの問題に対して本来思っている疑問や不満を躊躇せず率直に話し合える環境があると思います。充実したジェンダー教育を受けられることは女子大の最大の強みだと思います。
上原:授業で学んだことを引用したり、 学生間で指摘し合ったり、日常的に発言しやすい雰囲気がありますね。
山本:あと、フェリスの図書館は他の女子大と比較してもジェンダー関連の資料が充実していて、良書が入るのも早いです。学生たちにはよい文章を読ませ、知識を養ってほしいです。
上原:図書館で企画している展示も有益です。学生は、体験の中で感じる違和感を、こだわりすぎでは、と自己抑制的に我慢する傾向があります。しかしふと通りかかった展示で手に取った本をきっかけに、おかしいと感じている疑問に学問的な意味があるのだと発見し、知識を得る環境があることは、とても心強いです。

―――コロナ禍により海外渡航は制約されましたが、SDGsというグローバルな課題への興味がローカルに向けられた一面もあります。フィールドワークの場は海外に行かずとも身近なところにあることに気づき、足元からできることを実践していきたいですね。

注1
気候危機,Zero Carbon Yokohamaへ
学生がチャレンジ!
https://www.ferris.ac.jp/blog/20210218/7245/
ゼロカーボン横浜の達成へ向け、アフレコにチャレンジ!
https://magazine.ferris.ac.jp/2022/02/25/10968/

注2
*北欧家具IKEA×国際交流学部・知足章宏ゼミ
サステナブル・ライフスタイルの実現へ(Vlog)
https://www.ferris.ac.jp/blog/20211104/7997/

注3
横浜市環境創造局政策調整部政策課
SNSで学ぼう!
(協力:フェリス女学院大学 Ferris STEP)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/katudo/campaign/info.html

山本 千晶(やまもと ちあき)
国際交流学部准教授
専門:ジェンダー、性暴力、フェミニズム
2022年度後期担当授業: 「現代社会を理解するためのジェンダー理論」 「法でみる社会A」等


知足 章宏(ちあし あきひろ)
国際交流学部准教授
専門:環境経済・政策学
2022年度後期担当授業:「ボランティア活動が変える世界」「中国の環境と開発」等


上原 良子(うえはら よしこ)
国際交流学部教授、教務主任
専門:国際関係論、地域研究、西洋史
2022年度後期担当授業:「転換の時代を生きる2」「国際交流への招待」等

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